不動産

不動産(ふどうさん、: immovables)とは、国際私法大陸法系の民事法で用いられる概念であり、大まかにいうと土地とその定着物、あるいはそれらに対する物権を広く含むこともある。英米法系の民事法における物的財産(real property)に近似する概念であり、その訳語としても用いられることが多い。

日本法においては、土地及びその定着物をいうとされ(民法86条)、条文上の直接の根拠はないが、建物それ自体が土地とは別個の不動産とされる(不動産登記法はそのような前提で定められている)。これは台湾民法にもみられるが、比較法的には珍しい。この他にも特別の法律により立木鉄道財団等も一個の不動産とされている。

また、本来は不動産ではないが、法律行政上などで不動産に準じて扱われることがあるものとして船舶航空機鉱業権などがある。

民法で定める不動産編集

土地及びその定着物をいう(民法86条1項)。不動産以外のは、全て動産(どうさん)である(同条2項)。

不動産は、その全てが替えの効かない特定物であり、また移動が容易でなく、かつ、財産としても高価であるため、動産とは別個の規制に服する(民法177条など)。

日本の民法においては土地上の建物は土地と別個の不動産として扱われる(民法370条)。このため、土地売買契約によって譲り受けても、買主は土地の上にある建物の所有権を当然には取得できないし、土地に抵当権を設定しても抵当権者は建物に対する抵当権を当然には取得しない。民法は不動産に公示の原則の考え方を採っており、所有権を取得しても登記が無ければ第三者に対し、所有権を対抗できないとしている(民法177条)。

登記法では、建物であるためには、屋根で遮断されていて、建物としての用途に供しうること、土地に定着していることが求められる。そのため建築中の建物は、屋根や壁が作られた段階で、動産である建築資材から不動産である建物へと法的な扱いが変わる。但し、自動車等で牽引する移動式の建物(キャンピングトレーラーの類)は、不動産ではなく動産に含まれる。この扱いについてはトレーラーハウスも参照。

ふすま障子などは動産であり、建物とは別個の財産である。しかし、これらの動産は不動産に付属する従物として、建物とは別に扱うとする特約がない限り、建物所有権の移転、建物に対する抵当権の設定などの効果を受ける。他方、立木は土地の定着物であるため不動産であるが、後述する特別法によって独立の不動産として取り扱われる場合を除き、定着物たる土地に吸収される。

特別法で定める不動産編集

不動産とみなされるもの編集

不動産の規定が準用される物権編集

民事執行法上の不動産編集

金銭執行は執行対象財産の種類に応じて、不動産に対する金銭執行(不動産の強制競売・強制管理、不動産競売・担保不動産収益執行)、動産に対する金銭執行(動産執行、動産競売)、債権その他の財産権に対する金銭執行(債権執行、各種財産権執行、少額訴訟債権執行)、船舶・航空機・自動車・建設機械等に対する金銭執行(準不動産執行、準不動産競売)に区分される[3]。この財産の種類の区分は執行手続の構造上の異同によるもので民法における区別とは一致しない。

知識の一環で悪しからず。